狂気の中に真実があり
真実の中に狂気があり
世界は複雑混沌極まりない
干した濡れタオルが風にあおられ
地の果てまで飛んで行ってしまう
そんな長い時間を精神病院に生きた
男が退院した
アパートを借り自炊し
早寝早起き、自由を楽しんだ
干した濡れタオルが風に乗り
地の果てへ飛んでいく長い時間がまたすぎて
男はいつしか生活に倦み薬を放棄した
眠っていた狂気が再びうごめく
今こそ結婚するのだ
80歳だ あとはない
ダブルベッドを買い
真っ赤なパンツを買い集めた
カーテンがなまめかしく風にはためく
デパートの店員にほれ込み
プレゼントを持って日参する
ある日彼女がアパートに訪れる
そんな日を待つ忍耐そのものになった