わたしは山っこ山育ち
粉雪が舞い始め冬将軍の到来だ
小屋からスキーを引っ張り出して
滑走を試みる
粉雪が積もり山が白い姿に変わるとき
秘密のルートをひとりでたどる
来る日も来る日も
誰にも内緒の自分だけのルートを
滑走する
木の枝から落ちてくる雪をよけながら
埋もれてしまわないように
緩急とカーブの変化をあきることくなためすのだ
危険といわれても
ただひとり滑走せずにはいられない
やがて明るい陽射しに粉雪がとける頃
秘密のルートの地面があらわになり
山スキーの季節が終わる
ある年陽射しが心の扉をたたき
スキーをやめようと決めた
十分に楽しんだ
十分に堪能した
そうして
二度と山スキーをしたことがない