奥山にもみじふみわけ
鳴く鹿の声きくときぞ
秋は悲しき
言わずとしれた小倉百人一首の歌
梅雨とアジサイの6月からは
ほど遠い季節の歌
しかし季節外れもまたよし
常識外れの読み方をしてみたい
きみとぼくふたりは木々の根っこに
足をとられないよう気をつけて
しだいに山の高みへと歩みを進めた
下界の物音が聞えない無音の世界へと
たどりついた
紅葉は散り始めてまるでじゅうたんのよう
ふたりはもみじ葉の上に持参のビニルシートを
広げて寝そべった
木漏れ日がさしてくる
秋っていいな
そのとき鹿の鳴き声が聞えた
こちらへ近づいては去る足音の気配がした
ふたたび無音の世界
きみとぼく
ふたりだけ
秋っていいなあ