伊勢神宮と言えば私には楽しいとは言えない思い出がある。
修学旅行に行けなかった生徒がいる。
昔も今もそういう事情は変わらないはずだ。
私もそんな生徒の一人だった。
小学校6年生。目的地は
伊勢神宮と二見ヶ浦だった。
流行病にかかり、1か月間学校を休んでいるうちに
級友たちはお伊勢さんに行って帰ってきたのだった。
幼児のころに始まっていた夜尿症はなかなか治らず、
小学校3年生になった頃から、6年生になったら
修学旅行に行き一泊することがこども心に
悩みの種だった。
ふだんは忘れていても何かの拍子に
思い出されるのであった。
そういうこども心にとって
行かずにすんだことは安堵と言えば安堵だった。
不参加の残念さよりも安堵の方がまさっていた。
病気がなおって1か月ぶりに登校した日のこと。
数人の女の子たちのグループがおみやげにと言って
お菓子や絵葉書をくれた。
その子たちは日ごろ、宿題をし忘れたといっては
廊下に立たされるのが常だった。
今の私は思うのだ。
廊下に立たされたその女の子たちは
どんな気持ちでその時間をすごしていたのだろう。
そして今、どうしているのだろうと。