「急ぐ」と一言云ったばかりに
タクシーは飛ばしに飛ばし
目的地に時間内に到着
乗客は眩暈に頭痛、嘔気に嘔吐
苦しみながらビル内に消えた
スピードに懲りた乗客は次の日
「飛ばすと嘔吐する」と運転手に警告
驚く運転手は時速30キロ
あわれに思ったのか
「お客さん」
飛行機は大丈夫ですか
船は 電車は 飛行機は
高速バスは 新幹線は
と乗り物づくしを始める始末
わたしはエレバーターが苦手でしてね
自転車にも追い抜かれる車中で
乗り物酔い談義に
花が咲く
季節は速足ですぎてゆき
酔い止めを服用し
機上の人となったくだんの乗客
滑走路に向かう機体に
大きく手をふる整備士の姿が
小さくなっていく
無事に飛んでくれ
手術を終えた外科医のように
願いのこもった両手の動きが目にしみた