寒くなってきた
もっともっと
寒くなるだろう
すきま風の入る日には
イチゴを想うことにしよう。
実の赤色
実の甘さ
寒くなってきた
もっともっと
寒くなるだろう
すきま風の入る日には
イチゴを想うことにしよう。
実の赤色
実の甘さ
美しすぎる言い回しに
かえって反発してしまっていた
何に念ずるのか
何を念ずるのか
読者まかせなんだろうかと
今日という日に
偶然友達としゃべっていると
友達の考えをきいた
それはね
恩寵ということなんじゃないかな
自分ひとりの力は小さいもの
補ってくれるものが要る
恩寵って言うんだ
授けてくれるもの
恩寵がいつもどこかにあることを
知ること
いつもは酔っぱらってダジャレを
飛ばしている人にしては
いいことを言うな
年の暮れだからさえていたのかもしれない
一日目
JR元町駅で降りて
別館牡丹園へ直行
焼きそばや酢豚を食べよう
その後は
三ノ宮駅まで歩いて
ポートライナーに乗り
突端の公園のある駅で
降りる
海辺から淡路島が見えるだろう
今年は
嵐山の紅葉のピークが早く
今日の日曜日は落ち葉を
見ることになりそうだ
落ち葉だってそれなりに美しい
年配の婦人が
こんな話をしてくれた
「朝の早い時間に
ほうきで はいていると、
いろんな人が
話しかけてくれるんです。
それが楽しいし、ちょっとは私も役に
立ってるなと思えるのがうれしい」
なかなかこうはできないな
いつか自分も同じことを
するのだろうか
そんなことより
気になることがある
たまたま受け取った千円札が
破れ目をセロハンテープで貼り止めたもの
ATMで預入できなくて困っている
知らん顔して
どこかで使ってみようか
それとも
近所の婦人にならって
他人の役に立つために
銀行の窓口で両替を
頼んでみようか
自宅とクリニックの行き帰り
歩く道沿いに
ほかほか亭という持ち帰り弁当の店がある
夜になると
店内の明るい照明が街路にもれる
美味しいのかな
買って帰ろうか
毎日考える
食事を用意する手間がいらなくて
簡単にすませられる
買って帰ろうかな
誘惑を振り切って帰宅すると
何事もなかったかのように
店の名前すら忘れてしまう
一度だけ買って食べたことがある
亡妻の通夜を控えた午後に
義兄とその妻、私と娘の四人で食べたことを
思い出す
暖かな午後の時間である
空は青く
街路樹のイチョウの
黄色の葉が歩道にふりかかる
バスを待つ時間に
本を開いて読んでいる人を見た
たいていは
スマホを見る人が多いのだが
珍しいので
思わずじろじろ見てしまった
うらやましかったのかもしれない
いいな
本を読む時間があって
帰宅したら
本を読もうっと
妻も
私も
苦手なものの
一つが
ジェットコースターだった
「10万円をやると言われても
乗りたくない」
と私が言えば
「10万円をもらえるんなら
私は乗る」
と妻が答える
毎回、同じやり取りなのだが
忘れた頃に
ふとまた
同じやり取り
金額が10万円というところも
毎度
同じなのだった
『人生は一冊のノートにまとめなさい』という本を
読んでいた
今日初めて出会った言葉
日本語になおすと
人生の記録という意味
日々の行動の記録をしてみることを
勧めている
なるほど
大切な日のことを忘れないために
電車の切符を大切に持っていたのを
思い出した
特別な一日ではなくて
平凡な日だって
いろんなことがある
それをノートに記録しようと
勧めている
なぜなら
平凡な一日の方がはるかに多いのだから
そして平凡な毎日の中に
何かの予兆があったりする
なぜか
今日は小学生の頃を思い出す
授業時間のあいだ
先生の話すことに
うなづくのがくせだった
まるで自分だけに語られているように
うんうん、とうなづくのであった
後ろの席の女の子が
それ、変やで
というので
やめた
小学校の授業で
いちばん楽しい時間は
家庭科だった
運針も
調理実習も
ちりとり道具作りも
そんな話を亡妻にしたら
「そのわりには今はあんまり
家の用事をしないわね」
と言われてしまった
きっと
自分の思いは
過ぎ去った小学生の日々を
懐かしむところに
あって
家庭科が楽しいというのは
思い出の糸口だった
もし亡妻にもう一度語らせるなら
「小学生の頃って
誰にとっても懐かしい思い出があるわね
つらい思い出だってあるし
私にもいろいろある
それにしても家庭科が好きって意外だわ
そういう才能があるのだから
今、発揮したらいいんじゃないのかな」