白いツツジの花
花期は長いのだけれど
さすがに茶色に変わってきた
散るのもあるが
しっかりとがくに
くっついているのもある
ひとつひとつとりのぞいてみた
ハチが飛んでいるすぐそばで
はなびらをむしる
ハチはいそがしいのだ
ハチミツをつくるのだがら
bee is busy
人をさしているひまなどありはしない
白いツツジの花
花期は長いのだけれど
さすがに茶色に変わってきた
散るのもあるが
しっかりとがくに
くっついているのもある
ひとつひとつとりのぞいてみた
ハチが飛んでいるすぐそばで
はなびらをむしる
ハチはいそがしいのだ
ハチミツをつくるのだがら
bee is busy
人をさしているひまなどありはしない
4年前、カシの木の根元に春先に葉が
落ちてつもっているのに気づいた
毎年見ていたはずなのだが
はじめて意識にのぼったのだった
すべての葉が落ちるのだろうか?
そうなのだ
全部の葉が新しい葉に入れ替わるのだった
常緑樹だから、葉を落とさないのではない
葉のない時期がないのが常緑樹
カシの隣の金木犀はほとんど葉を落とさなかった
renkyu wa owatta
つくば市で学生だった頃
1年生の化学の講義
こんなローマ字を黒板に書いた
教授がいた
本格的に授業が始まる時期が来る
合図だったのだ
次の連休は海の日
umi no hi o matinagara
海の日を待ちながら
夕方になっても明るい空に
伊丹へ向かう飛行機が
くっきりと雲をえがいた
75回の夜と昼とを
泳ぎきらない者は
母なる海へ到達できない
くるみの木を思い出した
北海道にあった1本のくるみの木を
思い出した
樹高10メートルはありそうな大木
秋には実をつけて落ちると黒くなった
鬼ぐるみを拾い集めて実を食べた
シルバスタインの『大きな木』
欲望に駆られた男が次々に
りんごの木に要求して最後には
幹を切り倒してしまう話
献身に生きた母なる木と
貪欲のままに東奔西走するが
決して満たされることのない
哀れな男の物語
もう見ることのないクルミの木と
リンゴの木の思い出がせつなく
よみがえった
ふるさとの町には
川が流れている
ただし大雨のとき以外は
かろうじて水が流れているほどだし
2級河川どころか3級、あるいは
それ以下といったところ
こいのぼりが川の水面上すぐに
とりつけられていて
見上げるのではなく
見下ろすような位置にある
うしろから歩いてきた女の子曰く
屋根より高くないね
このこいのぼりは
高層中層低層入り乱れ
瓦屋根は少なくなってしまった
この時代
それでも歌は同じままだ
西神戸のとあるJR沿線の町
かなり急な坂をのぼっていくと
向こうに見えてきた
親の家は草が生い茂り
笹は伸びほうだい
あばら家になっていた
全部で3時間の予定で
不用品をかたづける作業をした
古い手紙や趣味のものなどが
残されている
見始めると作業の手がとまる
親の家の整理は
自分自身の整理だ
ここ嵐山は観光で訪れる人が多い
きょうのような雨でも
道を歩く人がとだえない
雨にうたれるかえでの新緑が目にしみる
服装に目がいってしまうとき
言葉は明らかに日本語以外なのに
服装はふだん着で
私たち日本に住む人と変わらない
いつか外国へ旅したら
服屋を見に行きたい
萩原朔太郎は
せめて新しき背広着て旅に出ん
とうたったけれども
晴れ着の旅人は嵐山には来ない
地域ネコは子ネコを生み終わったらしく
半月ほど前に現れたときにはおなかの
ふくらみがなくなっていた
全体にやせて授乳のため
栄養がもっていかれているのだろうか
きょうは長い時間、えさ入れの皿あたりに
たむろしている
子ネコを忘却したのではあるまい
子ネコは生後まもなく全匹死んでしまったのか
忘却といえばきのうのことはかなりおぼえているけれど
1週間前のこととなると相当忘れている
人はなぜ最近のことでさえ忘却するのだろう
早朝からおだやかな天気の予感があった
風はそよ風、空は晴れ、気温あたたか
うるわしの5月そのもの
ドイツ語ではシェーン・マイ
戸外に出て陽に当たっていると
心が安らいだ
町一番の陰気な人も
家から外へ歩み出た
西に傾いた太陽がいつまでも
沈まないでほしいと思った
こんな天気の日は一年をとおして
十日あるなしだろう。
6月はジューン・ブライド
きっと一日くらいは夕空が明るく晴れて
美しい日があるだろう。
月に一度のとびきりの
気象の美しい日
生きる理由がここにある
宿直の役所の職員は
初めての仕事の夜
どんなカップルが夜中に
届を持ってくるのだろうかと
いぶかしく思いながら
硬いソファに座っていた
自分のうちなら今頃
缶ビール片手にテレビとあいなっているころだ
ああのみたいな
午前0時を回る頃
二人連れの男女が来た
あまりのみすぼらしい服装に
ちょっとお恵みをさしあげなくては
ポケットに手を入れて小銭をさがし
宿直員はこの新婚カップルをあわれんだ
届を整理箱にしまい
さっきまで座っていた硬いソファに
戻ろうとしたとき
帰っていくカップルの後ろ姿が見えた
後ろ姿はふたりの間の愛を
真昼のおだやかな光のように
はなっていた
宿直員は思った
あれが愛なのだ
愛が人間に宿る時
あんな姿になるのだ
貧しいために
夜おそくまで二人して働き
結婚式も披露宴も
指輪も花束もない
ただ愛しかない
夜が更けて
町は静まり
亡妻がしきりに思い出された
宿直員は眠りに落ちていった