ふとある人物のことを思い出す
なにげなく浮かんだ言葉からの
連想で知人を思い起こすことがある
そうすると不思議なことが起きる
当の人物が現われるのだ
ふとある人物のことを思い出す
なにげなく浮かんだ言葉からの
連想で知人を思い起こすことがある
そうすると不思議なことが起きる
当の人物が現われるのだ
ホイッスラーという画家の展覧会を見た
日本でいえば
江戸末期から明治にかけての時期に
イギリスで作品を発表していた画家である
都会を好み、テムズ川にかけられる鉄橋を
好んで描いた
ただ感嘆するばかりのうまさである
絵画とは不思議なものである。
みんなちがっていて、それぞれが
最高の美しさを現わしている。
みんなちがってみんないいとは
最高の画家たちの最高の作品に
何よりもあてはまる
遅刻癖の花嫁さん
やっぱり結婚式に
遅刻した
後の式が控えていたので
開始時間を延期できず
やむなく挙式開始
花嫁がいないままに
進められた
けなげな花婿は
祭壇を背にして
バージンロードを見つめる
その目に涙をたたえて
到着を待つのだった
ベストコンディションの日
そんなときがあるのだろうか
きのうはからだがだるかった
きょうはやる気が足りなかった
明日はどうなることか
きっとベストコンディションの日は
やってこないだろう
思い出した
食べたことがあった
北の町の場末の魚料理店で
その味わいはまったく思い出せず
ただ食べたことだけがよみがえる
入社試験があるわけではもちろんなく
面接試験も観察期間も何もなく
ある日をさかいに母子になる
お互いに相性を確かめ合ったわけではないので
育児がむずかしいのは当然だ
それでも何とか大きな破たんもなく
世間の母子はやっていく
育児が大層疲れるのは当然だ
子はたいていいつも恩知らず
ひとりで大きくなったような顔をしている
しかしそれでいいのだ
黒と茶と白
まだらの母猫が前足で
窓ガラスをたたく
山裾の町の音もない夜明け
外は寒かろうが
年中同じ毛をまとった体で
餌をねだる地域猫に
見かねた女主人が
前夜の食べ残しのさかなの
しっぽを与えると
子猫が3匹、すばやく寄り集まる
地域ネコにとって
朝食の始まりは幸福の始まりである
生きることは食べること
こんなにもシンプル
小さな部屋かもしれないが
朝日がさしこんでくる
古びた茶碗だが
そそがれた紅茶の色は美しい
ゆですぎて
半熟卵になりそこねたのだが
卵に向かって文句を言うわけには
いかず眉をしかめて
窓の外を見ると
母猫と目が合う
にっこりとはしてくれないけれど
関西のとある山の名前
六甲山 鉢伏山 円山
山頂はなだらかな傾斜
とんがった山などどこにもない
時間をさかのぼれるのなら
山ができた瞬間に立ち合いたい
山がとんがっていた時に
戻ってみたい
こんな言い伝えがあった
男子厨房に入るべからず
封建的 男女差別 女性蔑視
非難は雨あられと語られる
深い知恵があったとは誰も思わない
厨房では火のために熱がこもり、
片肌脱ぎ、もろ肌脱ぎが
当たり前
そんな中に男が混じればどうなるか
そうではなくとも
複数の人間が協力しあって
調理をするとき、同性どうしの方が
まとまりがいいはずだ
すっかり定着した
夫のお産立ち合い
赤ちゃんが産道をとおり
全身を現わすと写真をとって
涙を流し笑顔を輝かせる
生まれたばかりの児は顔をしかめて
泣いているのだが
母親は安堵する
子どもが無事生まれたことに
夫が良き父親になりそうな予感に
月日が過ぎて
4人に一人夫は家庭を顧みなくなる
3年たてば別の人
男の涙を信じすぎてはいけないよ