Just another WordPress site
サンタさんが来るまで起きてようね
姉弟はそう決めて
歌を歌ったり絵本を読んで
眠い目をこすりながら待っていた
9時、10時、11時、0時
心配になってきて
家の裏側の大きな川を
窓から眺めて流されている人がいないか
確かめた
きっと道に迷っているんだわ
ふたりは考えた
0時を回り二人は眠りに落ちた
眠る前に手紙を書いた
道に迷ってやっと着いたサンタクロースは
女の子と男の子の枕もとに
置いてある手紙を見つけた
サンタさんへ
私の願いを聞いてくれるのなら
お母さんとお父さんにあげたい物があって
それを私と弟はほしい
お母さんには手袋をあげたいの
手があかぎれて痛いから
お父さんには靴下をあげたいの
足のしもやけがかゆいから
こどもらの希望がかなえられたことは
言うまでもない
ただのガラスの
三角柱にすぎないのだが
いったん光を浴びれば
七色が立ち現れる
長さ1000メートルのプリズムが
もしあるのなら
長さ1000メートルの虹が見えるだろう
こんな夢想をする
風変わりな男がここにいる
家の窓という窓のガラスを
プリズムで作った
虹の家ができあがり
バンダナ長髪の男を見ると
近所の子供らは
七色ハウスのあんぽんたん
とからかうのだった
あなたと私だけの
小さな空間ゆえのくつろぎは
捨てがたいけれど
人にはもっと大きな空間がいる
視界の届くかぎり
地上は200キロ遠方が見え
天空は果てしない高さを望む
人はいかにも微小な存在だが
大空間があればこその
生命体
あなたと私
孤独ではないことを確かめるために
この寄る辺なき大空間がときにはほしいのだ
雨ふり雪ふりみぞれふる
冬至の朝
霜柱の立つ道踏みしめて
一人歩きのさびしき
父母に見送られた
この道のなつかしき
冬至の朝
始まれば終わる道理は
知りたれども
見送る人のなきぞさびしき
とある町のうら若き女
自他ともに認める守銭奴だった
着ているパジャマは
10年以上の年代物
袖口襟元擦り切れていようが
どうぜ寝間着よ
誰に会うでなし
カレーライスを食べるとき
混ぜたりせずに
ルーから食べていくので
皿は汚れず水も汚さず
まことに合理的
働くとなると
懸命に働く
人に対しては愛情深く接するので
誰からも気に入られた
この人物に言わせると
人は金
タイム イズ マネーではないのだ
ピープル イズ マネー
私は金が好き
私は人が好き
だから誰に対しても
心をこめて接するのだった
ここまでくれば
見上げたものだよ
守銭奴のお嬢さん
不思議な現象である
知らぬ間に眠りについて
気がつくと目覚めている
意志もいらず準備もいらず
眠りがやってくる
やってきた眠りは
朝には去っていく
日に照らされて
消えていく朝露のように
暗闇のなか
目覚めていることのつらさ
そのつらさから逃れられるように
眠りが与えられているのだ
手招きすれば逃げていく
知らぬふうをしていると
寄ってくる
眠りは黒ネコに似ている
人は二度生まれる
一度目は愛される存在として
二度目は自らが愛する存在として
愛される存在として生きることは
安楽でありかつ苦渋に満ちている
それならば
愛する存在として生きることは
いかに
風が道路のほこりを舞い上げて
ポリ袋が飛ばされていく
こんな強風の日には
沖縄も寒かろ
海から冷たい風が島を軽々と
渡っていく
こんな夜には沖縄も寒かろ
なんと本日の最高気温は15度
当地の住民にしてみれば
思わず背をすぼめるほどの冷えようだ
まして日暮れがくると
沖縄の夜は寒かろ
時は過ぎて
今夜
地域ネコが討ち入りする
夜半に集結し
勇ましく行進する
鉢巻をし
のぼりを立て
旗をふって
どこへ
それは計り知れない
おそらくは
食べ物を蓄えている冷蔵庫へ
いちに いちに
地域ネコが早朝から行進する
きょうは会議があるらしい
家ネコがこたつで寝ている頃
寒風ふきすさぶ中
いちに いちに
地域ネコは行進し会議を開く
あのな
今度からな
12月はな
師走というのはやめてな
ネコぱっしり
いうことにしような
そう猫走
関西弁を話すねこの会議で
こう決められたのだった
その頃
電池を買いに
コンビニへひた走る男がいた
猫走12日の朝のことであった
きょうはバッテリーの日なのであった