道に迷ったサンタクロース(平成26年12月24日)

サンタさんが来るまで起きてようね

姉弟はそう決めて

歌を歌ったり絵本を読んで

眠い目をこすりながら待っていた

9時、10時、11時、0時

心配になってきて

家の裏側の大きな川を

窓から眺めて流されている人がいないか

確かめた

きっと道に迷っているんだわ

ふたりは考えた

0時を回り二人は眠りに落ちた

眠る前に手紙を書いた

道に迷ってやっと着いたサンタクロースは

女の子と男の子の枕もとに

置いてある手紙を見つけた

 

サンタさんへ

私の願いを聞いてくれるのなら

お母さんとお父さんにあげたい物があって

それを私と弟はほしい

お母さんには手袋をあげたいの

手があかぎれて痛いから

お父さんには靴下をあげたいの

足のしもやけがかゆいから

 

こどもらの希望がかなえられたことは

言うまでもない

 

プリズム(平成26年12月23日)

ただのガラスの

三角柱にすぎないのだが

いったん光を浴びれば

七色が立ち現れる

長さ1000メートルのプリズムが

もしあるのなら

長さ1000メートルの虹が見えるだろう

こんな夢想をする

風変わりな男がここにいる

家の窓という窓のガラスを

プリズムで作った

虹の家ができあがり

バンダナ長髪の男を見ると

近所の子供らは

七色ハウスのあんぽんたん

とからかうのだった

 

 

起きて一畳寝て半畳(平成26年12月23日)

あなたと私だけの

小さな空間ゆえのくつろぎは

捨てがたいけれど

人にはもっと大きな空間がいる

視界の届くかぎり

地上は200キロ遠方が見え

天空は果てしない高さを望む

人はいかにも微小な存在だが

大空間があればこその

生命体

あなたと私

孤独ではないことを確かめるために

この寄る辺なき大空間がときにはほしいのだ

 

 

ある守銭奴(平成26年12月21日)

とある町のうら若き女

自他ともに認める守銭奴だった

着ているパジャマは

10年以上の年代物

袖口襟元擦り切れていようが

どうぜ寝間着よ

誰に会うでなし

カレーライスを食べるとき

混ぜたりせずに

ルーから食べていくので

皿は汚れず水も汚さず

まことに合理的

働くとなると

懸命に働く

人に対しては愛情深く接するので

誰からも気に入られた

この人物に言わせると

人は金

タイム イズ マネーではないのだ

ピープル イズ マネー

私は金が好き

私は人が好き

だから誰に対しても

心をこめて接するのだった

ここまでくれば

見上げたものだよ

守銭奴のお嬢さん

眠り(平成26年12月21日)

不思議な現象である

知らぬ間に眠りについて

気がつくと目覚めている

意志もいらず準備もいらず

眠りがやってくる

やってきた眠りは

朝には去っていく

日に照らされて

消えていく朝露のように

 

暗闇のなか

目覚めていることのつらさ

そのつらさから逃れられるように

眠りが与えられているのだ

 

手招きすれば逃げていく

知らぬふうをしていると

寄ってくる

眠りは黒ネコに似ている

 

 

沖縄の夜は寒かろ(平成26年12月17日)

風が道路のほこりを舞い上げて

ポリ袋が飛ばされていく

こんな強風の日には

沖縄も寒かろ

海から冷たい風が島を軽々と

渡っていく

こんな夜には沖縄も寒かろ

なんと本日の最高気温は15度

当地の住民にしてみれば

思わず背をすぼめるほどの冷えようだ

まして日暮れがくると

沖縄の夜は寒かろ

 

地域ネコ行進(平成26年12月12日)

いちに いちに

地域ネコが早朝から行進する

きょうは会議があるらしい

家ネコがこたつで寝ている頃

寒風ふきすさぶ中

いちに いちに

地域ネコは行進し会議を開く

あのな

今度からな

12月はな

師走というのはやめてな

ネコぱっしり

いうことにしような

そう猫走

関西弁を話すねこの会議で

こう決められたのだった

その頃

電池を買いに

コンビニへひた走る男がいた

猫走12日の朝のことであった

きょうはバッテリーの日なのであった