ムーミン谷はきょうも片づけ  (平成27年8月23日)

夜明けのコーヒーをいれると

香りが部屋に充ちて

ムーミンは目をさました

お父さんはペンキ塗りを始めていた

「お父さん、生きるってどういうこと?」

「いらない物を片づけることさ」

服を着たムーミンは

部屋のゴミを片づけ始めたのだった

夏の終わりの朝はひんやりと

空気がおいしく

ムーミンは思いっきり息を吸ったのだった

肯定文と否定文 (平成27年8月17日)

アドラー心理学の野田俊作氏が8月16日ブログで
肯定文の力という題で記述をなされている。
忘れ物をしないで。という代わりに
持ち物は全部持ったの。
これはとても大事なことである。
ぜひその通りにしたいと思う。
自分に対して、他人に対して
肯定文で話しかけよう。

ところがこと文学の世界では逆転する。
文学は否定文において輝きを放つのである。
与謝野晶子の弟へささげた詩の題は
『君、死に給うことなかれ』である。
仮に、『君、生き給え』なら
平板な退屈な詩句となってしまう。

肯定文の世界と否定文の世界。
現実世界では肯定文を使い
文学という仮想世界では否定文を使う。

私たちには両方が必要なのである。

森を散歩しながら(平成27年8月15日)

両親に連れられて

お盆に帰省した〇〇子ちゃん

幼稚園の年少さんである

棚田には稲が育ち

その向こうには湾が見える

おばあちゃんと森を散歩した

木の根がグングン成長すると

地球の反対側に突き抜けるのじゃないのと

心配した

おばちゃんは幼児の手を握りながら

答えた

木の根はね

地面の下にまっすぐに伸びていくのじゃないんだよ

木の根はね

地面のすぐ下を横へ横へと伸びるんだよ

風にあおられて大木が倒れるのは

そういうわけなのさ

 

18歳 春 入学試験(平成27年8月9日)

1次試験が終わった

両親に手紙を書いた

やさしい問題だったので

英数は満点、国語は9割程度

4日後の2次試験に進めそうです

2次試験に合格しても入学するのはいやだな

大都会の人の多さに酔ってしまいます

合格してから考えることにします

帰りは1週間先になります

15歳・高1・8月・夏休み(平成27年8月9日)

もう一度

15歳 高1 8月 夏休みに

戻ることができたら

海の近くの山間の村へ行のだ ひとりで

数学問題集1冊と中原中也詩集1冊を持って

そして家の両親宛てに手紙を書くのだ 鉛筆で

お父さん お母さん 元気ですか

妹は元気ですか

僕も元気です

数学問題集あと10問を解いたら終わります

2学期数学の試験 100点をとりたい

中原中也詩集は全部暗唱できます

将来詩人の数学者になりたいです

早朝浜を歩き

波を見ていると時を忘れてしまいそう

来週帰宅します

我が庵はゴミ屋敷(平成27年7月14日)

名もない大学の万年准教授

読書家にして資料収集に熱心なのだが

とんと論文らしきものを書いたことがない

このまま定年を迎えるのだろうと

学内外の誰もがそう思っていた

 

気ままな一人暮らしに

明け暮れし

部屋は散らかり放題

買い求めた物の包装紙などが

たまる一方

ゴミだしをしたことがなかった

その日もコンビニ弁当を食べながら

テレビをつけると

ゴミ屋敷の特集番組がかかっていた

あまりの乱雑さに食欲を失いかけたのだが

なんと自分の家とそっくり

そうだこれぞゴミ屋敷なのだ

 

この始末を誰がするのか

思案にふけりつつ

飼い猫を抱いて布団にくるまった

 

ベッドを抜け出して(平成27年6月20日)

消灯時間をすぎて暗くなった病室で

輾転反側していると

おなかがすいてきた

パンが食べたいなと思っているうちに

イタリア語でパンはなんというのだろう

とんでもなく思考が脱線を始めた

ベッドを抜け出して

非常階段から病院の屋上にでた

家の方角を探していると

毎朝駅で出会っていた名まえを知らない

女の子を思い出した

退院して家に帰り高校へ通学するようになったら

駅で朝会ったとき初めて話しかけてみよう

おはようと言ってみよう

そんな勇気がわいてくるだろうか

夜景を見ていると悲しくなってきた

 

 

 

健気な少女の物語(平成27年6月9日)

この世間には無数の人がいて

無数の生き方をしている

どれが良くてどれが良くないと

言えるものではないのだが

ここに一人健気な少女がいる

年齢は16歳

看護学校にかよう生徒だ

病弱な母親と不登校がちな中1の妹がいて

朝に起きれない母に代わって

妹に弁当を作り学校へ送り出す

自分の弁当は時間を惜しんで作らず

パン屋で買うことにしている

20歳になったら卒業

試験に合格したら晴れて看護師

母を助けて家計をになう日を夢見ている

天のどこかに女神がいるのなら

きっとこの女の子を愛してやまないだろう