晩秋だったので
ムーミンは落ち葉の掃き掃除に
朝早くから取りかかった
掃いたあとにすぐまた落葉し
いっこうに終わらなかった
離れた所で大工仕事をでしている
パパのところへ行って
「お父さん、幸せの公式ってあるの」
ときいた
ムーミンパパは手を休めて
「それはあるさ
わけもなく幸せになってしまうことさ」
風が吹き始め
飛ばされていく落ち葉を
ムーミンは目で追った
晩秋だったので
ムーミンは落ち葉の掃き掃除に
朝早くから取りかかった
掃いたあとにすぐまた落葉し
いっこうに終わらなかった
離れた所で大工仕事をでしている
パパのところへ行って
「お父さん、幸せの公式ってあるの」
ときいた
ムーミンパパは手を休めて
「それはあるさ
わけもなく幸せになってしまうことさ」
風が吹き始め
飛ばされていく落ち葉を
ムーミンは目で追った
時
それは命そのもの
あなたの
わたしの
時
それは愛のこと
与えるもの
与えられるもの
時
それは宝物
奪ってはいけないもの
奪われてはならないもの
時
それは育っていくのに必要な時間
急ぐことはできない
短縮することはできない
時
それは惜しまなくてはならない
心そのものだから
時
それは時計で測られる
腕時計をはずしてはいけない
けれども
測りすぎてはならない
時
それは忘れなくてはいけない
生そのものだから
時
それはともにすごすもの
あなたとわたしの
二人の時
時
たとえ離れていても
二人の時は
シンクロナイズしあう
消極的な身の処し方がここに極まる
反面で
波乱を避ける身の処し方とも言える
年齢を重ねれば
誰しも
見ざる言わざる聞かざるに
たどり着く
寄り添って
砂浜を歩き
パラソルの下
並んで座り
オブジェのように
動きが止まったままの二人
それは確かな生の時である
君には
確かに
創造の才がある
想像の才もある
けれども
クリエーターになってはいけないよ
型にはまった仕事
文字を転記するような
そんな仕事に
君ははまりこまねばならないよ
いたちといたち、雄と雌だったので
たちまち夫婦になり
あっという間もなく
仔いたちを産んだ
仔いたちは一度に二匹、三匹と増えるので
ネズミ算式を越えて
いたち算式に倍加していった
かくして
天井裏はいたち達の牙城となり
大音響をとどろかすのだが
家主はいっこう平気で暮らしている
彼は成人してから難聴となり
外出時以外は補聴器をつけない習慣だったので
いたち達の存在にはつゆ気づかず
穏やかな目をして
庭に来るスズメやハトを見つめるのだった
初めてふたりだけで会った日
公園の散策中に小雨が降りだした
傘はひとつ
わたしの手の中に
自分だけがさすのも気がひけて
かといって
あなたにさしかけるには勇気がいって
わたしは傘を握りしめたまま
あなたに二人でさそうと
言ってほしかった
食うことには目のない男がいた
給料すべてを食べることにつぎこみ
食べることが生きがいになっていた
大した量を食べるのだが
いっこうに太らず
50歳というのに
スリムな体のラインを保っていた
この男には秘密があった
食べ物が消化器を通り
腸から先はふともも、ふくらはぎ、
足のうらを経て
地面のなかへと流れ込むのだった
何かに腹を立て
プッツンすると教室を飛び出して
家に帰る小学生がいた
これは確かな話である
私がいたクラスでときどき起きたことだから
3階にある教室の窓から
しだいに小さくなっていく後ろ姿をながめていた
あれは
はるか昔のことなのに
あまりにささいなことなのに
その光景とその女の子が
なつかしさといとおしさを
感じさせてくれるのだ
40歳前後と思われる
ワイシャツの袖をまくりあげ
PCに向かっているかと思うと
かかってきた電話を受け
指示を仰ぎに来た部下には
短く的確な指示を出す
いかにも働き盛りの男
離島体験が彼を変えたことを
誰ひとり知らない
20歳のなまくら学生だった男は
楽して暮らそうと
離島にあこがれ
瀬戸内海のある島を訪れた
移住請負団体の管理人に案内され
1宿1飯の予定を7日に伸ばしてもらい
隅々まで案内された
浜辺で一日ぼんやりと過ごしたり
農作業の手伝いをしたり
あるとき
山の急斜面の畑で働く
90歳を超えた老婦を見た
その時から
男は変わった
変えられた
老婦が男を変えてしまった
別人のごとく学業に励み
そのあとは言うまでもない
激務をこなした夕方
高層ビルのオフィスの窓辺に立つとき
心は離島と老婦に向かって
さまよい出るのだった