不治の病ですと
告げられたあの日を
境に
娘二人の態度が変わった
だらしなさが消え
身づくろいを丁寧にし
言葉使いさえもあらたまった
一年が過ぎて
自分はこうして一見変わりなく生きているのだが
娘はふたりとも結婚を決めた
まもなくそれぞれに子どもが生まれ
お宮参りをすることとなった
抗がん剤の影響で声帯が硬くなったのだけれど
最後と思い歌のリサイタルを開くと
会場に集まった友人らは
涙を流して聴いていた
不治の病ですと
告げられたあの日を
境に
娘二人の態度が変わった
だらしなさが消え
身づくろいを丁寧にし
言葉使いさえもあらたまった
一年が過ぎて
自分はこうして一見変わりなく生きているのだが
娘はふたりとも結婚を決めた
まもなくそれぞれに子どもが生まれ
お宮参りをすることとなった
抗がん剤の影響で声帯が硬くなったのだけれど
最後と思い歌のリサイタルを開くと
会場に集まった友人らは
涙を流して聴いていた
はげ頭!
大きな声が発せられた
教授は意に介するそぶりもなく
ベッドの一人一人の
腕をとり聴診器を胸に当てる
再び はげ頭!
さっきよりももっと大きな声が
発せられた
教授は悠然と歩き去り
隣りの病室へと向かった
ここは小児科病棟
白血病の子どもたちが
入院する病棟だ
育ち盛りの小学生中学生が
お気に入りのおもちゃと
勉強の本をベッドの脇においている
朝の回診に
あの叫び声がある限り
生きていける
治るのだ
教授は信念が胸にわくのを感じるのだった
交差点に入り
左折するバスと
直進する乗用車とが
すれちがう
その完ぺきさ
あたりまえの
いつもの風景なのだが
なぜか妙に心がうたれた
1台1台のバスもクルマも
一人一人の通行人も
自分の役割を心得た役者のように
朝の劇をつくりあげていく
わたしもまた劇中人物のひとりになって
交差点の手前を
左へと折れて歩いていくのだった
イタリア語にはKがない
フランス語にはHがない
アルファベット26文字は英語の話だけだった
イタリア人はキッスをしないのだろうか
だってKという文字がないのだから
心配性の中一男子が
明日はテストだというのに
こんなことを考えながら
机に向かっていた
毎朝の通学路で目に入る文字はP
目につくクルマのマークはW
明日は落第点をとってしまいそうだ
昔々の恥ずかしい思い出である
母の友人が近所の誼で
よく話しに来ていた
腕回りが太く
わたしと妹はいつも
「あのおばちゃんの腕太いなあ」
としゃべり合っていた
ある時
いつものように話し込んでいる
そばに行って
「おばちゃん 腕回りを測らせて」
嫌がりもせずに腕を測らせてくれた
私と妹は「やっぱり太いなあ」と
感嘆したのであった
ずいぶんと失礼なことをしたものだ
無邪気で鈍感で愚かきわまりなく
なんと性悪な兄妹であったことだろう
冬の夜
輝きに惹かれて
街を歩いてみた
木々も建物も
趣向を凝らした明かりに照らされ
昼間と同じ街とは思えない
海を思い出した
暗くさみしく波音が聞えて
きびすを返して
立ち去るだろう
あの懐かしい海なのに
ライトアップされないもの
海
そして
われらの心の内奥
昨日、発行のお知らせをしたところです。
本日は注文のしかたをお知らせします。
本ブログ読者で『四季』を
注文なさりたい方は、
・82円切手8枚を郵便にて
お送りください。
・宛先:〒616-8421
京都市右京区嵯峨釈迦堂門前瀬戸川町4-8
嵯峨嵐山・田中クリニック
・また送り先の住所、名前を記入しておいてください。
・本体が500円、封筒+送料が156円です。
到着から1週間程度で送ります。
万が一遅れた場合はご容赦ください。
編集作業から1か月ほどして仕上がりました。
超スピードです。
本日午後、クロネコヤマトのクール宅急便の
クルマが止まり、
肩に段ボール箱一つをかついで
「重たいですよ」と言いながら、届けてくれた。
60頁足らずの薄い冊子ですが、
220冊分だと相当の重さになります。
もう冬ですし、生鮮食料品ではありませんから
クール宅急便扱いするのはどうかと思いましたが、
クルマがそういうクルマだったというだけのことで
冷やして配達したのではありませんでした。
ご希望の方にはお分けしたいと思います。
まだ価格、送料などが定まらないため
明日以降のご案内になります。
いつも行くクルマ修理屋のオヤジが
こんなことを言っている
夢を持つことは簡単だ
希望を語ることは簡単だ
難しいのは忍耐力を持つことだ
忍耐して前進することが
難しいのだ
たいていの者は夢を語ったとたんに
くじける
くじけるだけならまだましだ
くじける
いじける
意地悪になる
いいことなしだ
そんなやつらは黙ってろ
木枯らし吹きすさぶ高台の町で
あの娘はコートの襟を立てて
歩いているのだろうか
舞い散る葉さえも
落としつくした木々の枝の
何という不定形
この世界そのままの不定形
寄り添いたくなる
高木の根元に
しばし立ち尽くし
空を見上げているのだろうか
あの娘は
黒みがかった海面を
波立たせる風
その同じ風は頬をいっそう冷たくする
せめてあの娘の心の中では
木枯らしが吹き荒れないように
すさんだ心にならないように
木枯らしに祈る朝だった