自分を楽しませる方法を知っていた
老婦人の物語
『ベスト・フレンド』(昭和49年)より
週に1回の読書グループを世話していた
本を読んでくる人とケーキを焼いてくる人がいた
創作をしていた
友人、親戚と交際していた
ときどき旅行に出かけていた
自分を楽しませる方法を知っていた
老婦人の物語
『ベスト・フレンド』(昭和49年)より
週に1回の読書グループを世話していた
本を読んでくる人とケーキを焼いてくる人がいた
創作をしていた
友人、親戚と交際していた
ときどき旅行に出かけていた
今日は木曜日
明日金曜日を休暇にすると4連休
仮想4連休を考えていると
心が和んだ
連休1日目
手紙を書いた
連休2日目
読書した
連休3日目
詩を書いた
連休4日目
一人で小高い所へ登った
とある郊外の精神科病院の
昼下がりの診察室では
医師面接が行なわれていた
「あなたのほしいものは何ですか?」
と尋ねられて
「嫁さんがほしいです」
と答えが返ってきた
自由な時間ですだとか
まとまった額の小遣いですだとかの
答えを予想していたのだ
気分の波がある病気の人だったのだが
芯のところでは至ってまっとうな人の心が
生きていた
入院してから20数年がたち齢50歳余り
この先も長い入院生活が待ち受けている
手に入るはずのないものと
知りつつ望みを語ったのだろう
病院のへいの外には
田園が広がり
点在する家々では
お嫁さんのいる男たちの生活が
なんの疑問をもつこともなく
営まれていた
吉行淳之介氏が書いた小説の題
『星と月は天の穴』の
時代(1967年)から
はるかな時が過ぎて
星と星座について
知識が容易に得られる現代になった
宇宙には果てがあることを
星の数は有限であることを
吉行氏の時代は知らなかったし
現代人は知っている
夏逝き
秋去り
今は冬
冬の夜空を見上げれば
シリウス
カペラ
プロキオン
名まえの響きに耳をそばだて
アルデバラン
リゲル
冬のダイヤモンドが瞬く
最後は
ポルックス
天文好きの
男の子と女の子が
語り合うことは何もなく
ただ寄り添って
星の沈黙に同調していた
蜘蛛の営みは勤勉そのもの
木の枝と枝のあいだを
往復し幾何学模様の巣を
作り上げる
昆虫や蠅がひっかるのを
日がな一日待ち受ける
蜘蛛の営みは忍耐そのもの
自分が作った巣にひっかかる
そんな蜘蛛はおるまいて
人もまた
言葉を使い自分の巣を作り上げる
巣に反応する誰かを待つのである
待っているだけならいいが
言葉は魔法なので
自分で自分の言葉の巣にひっかかる
そんな輩(やから)が続出する
今日もまた
蜘蛛以下というべきか
蜘蛛以上というべきか
せめて道に迷わぬように
われらは今日もまた祈る者である
言葉はまことにやっかいである
標準語というものを知らないとき
さみしいとしか言わなかった
さみしいとしか聞いたことがなかった
いつの間にか
標準語を知るようになり
さびしいと聞き
またさびしいと言うようになった
歌謡曲を聴いていると
さみしいもあれば
さびしいと歌われている
慣れ親しんだ語感では
やはりさみしいがぴったりと来る
今夜はさみしくない時間が
過ぎていく
狂気の中に真実があり
真実の中に狂気があり
世界は複雑混沌極まりない
干した濡れタオルが風にあおられ
地の果てまで飛んで行ってしまう
そんな長い時間を精神病院に生きた
男が退院した
アパートを借り自炊し
早寝早起き、自由を楽しんだ
干した濡れタオルが風に乗り
地の果てへ飛んでいく長い時間がまたすぎて
男はいつしか生活に倦み薬を放棄した
眠っていた狂気が再びうごめく
今こそ結婚するのだ
80歳だ あとはない
ダブルベッドを買い
真っ赤なパンツを買い集めた
カーテンがなまめかしく風にはためく
デパートの店員にほれ込み
プレゼントを持って日参する
ある日彼女がアパートに訪れる
そんな日を待つ忍耐そのものになった
平成に変わるちょうど1年前
センター試験を受けた
その日は暖かく、会場の大学の芝生の庭に
シートをしいて、昼食を食べていると
日差しが心地よかった
うれしかったな あの日は
受験にこぎつけるまでの苦労と苦心がふっとんだ
帰りのバスを待っているとき、他の受験生が解答合わせを
しているのが聞えてきた
手から砂がこぼれるように次々に誤答に気づき
それでも夕方の青い空にうっすらとさす茜色の光の美しさに
心が動かされた
肝腎の試験はというと
数学はむずかしく2問目で手間取り
3問目へ進んだときは残り時間が少なくなっていた
高得点をねらっていたのだが、帰宅して採点すると
68%の出来。(これではとてもじゃないが
医学部の2次試験が無理だ)
しかし気落ちすることなく英語、社会は90%をとり、
国語は古文漢文がほとんどゼロ得点、現代国語は100%だったのだが
全体で79%の成績
関東の医学部へ2次試験願書を出すことに決めた
最終的にはセンター試験90%超えの生徒を合格させるとしても
2次試験の倍率を5倍に保つには79%成績の者にも受験のチャンスは
あると予測した
思ったとおり、受験番号が届いた
2次試験にそなえて、さっぱりわからない物理の教科書を
詠むのだが、むずかしくてむずかしくて閉口した
(未完)
愛が愛のままにとどまることは
ときにむずかしい
時間がたてばたつほどむずかしい
失われるのはしかたがないとして
憎悪へと変わったり
敵意に変わったりするのは
いただけない
にもかかわらず
それはひんぱんにおきていることだ
金のためだけに自分は生きてるのだろうか
どうやらそうではないような気がする
いや
人生は金
自分の信条はこれしかない
思い返してみる
自分は金のためだけに働いているのだろうか
感謝されたり
他人の役に立つことがうれしいから
そうではないのか
守銭奴は心がこうしてゆさぶられた