ふらんすにあこがれ
アーベーセーしか知らずに
渡仏した男がいた
知り合ったフランス田舎出の娘と
結婚し山がちの村に暮らした
羊を飼い牛を飼い小麦を育て
やがて生まれた子どもが3人
農夫になるよう育てた
村の会合に出席し祭りに参加し
フランス人になっていった
折からのツーリズム そんな村にも
日本の中年夫婦が村のホテルに
宿泊した
声をかけられたのだが
日本語は完ぺきに忘却していた
見た目にもフランス男になりきり
日本人の面影は何もなかった
祖国など念頭になく
ただひたすらに異国の旅人を
もてなすのだった