今頃 どこで何してるやら
知るすべとてわずかなものしかないのだが
思わずにはいられない
執着を捨てよと言われれば
息を止めよと言われるに等しい
老境に至った身を嘆くことはないのだが
思わずにはいられない
今頃 どこで 何してるやら
今頃 どこで何してるやら
知るすべとてわずかなものしかないのだが
思わずにはいられない
執着を捨てよと言われれば
息を止めよと言われるに等しい
老境に至った身を嘆くことはないのだが
思わずにはいられない
今頃 どこで 何してるやら
今 渡るおびただしい人
今 渡らないおびただしい人
雨降る金曜の夜は
渦巻く群衆が川の両側にうごめく
それはふとしたはずみで決まってしまう
熟慮なんてほど遠い
刹那
刹那
いいではないか
夜ごと夜ごと気温は零下
手水鉢の水は氷を張る
氷のうえに雪が積もり
昼の温かな陽がさすまでの
淡い時間がすぎる
雪解けの道を老婆が歩む
スカーフをかぶり顔がかくれてしまう
残りの時間を生ききることへの
執念に満ちた顔つきを
誰からも顧みられず
誰にもさとられず
一心に
窓ガラスの外には
枠にへばりつく雪
部屋の中に
入れるものなら入りたかった
日々の営みの外側に
追いやってしまった想念のように
時折姿を現す
朝には光がさして
あとかたもなく消えていく
消えてしまうのは見せかけだけ
自分の足で歩いて
ここに至って
一人前の生活人のはずなのだが
ときには
おんぶにだっこの日がなつかしい
その無責任 その安楽 その快適
こんなに長く生きてはきても
あの無責任 あの安楽 あの快適
ふるさとのように思えてしまうだ
古人は言う
庭ほどぜいたくな趣味はない
確かにそうだ 鹿苑寺
将軍の気まぐれが天から落ちる雫のように
池を塔を産みだした
気まぐれは今も人を呼び寄せる
人の波 人の波
広い庭はわからない
また古人は言う
狭さの中にこそ宇宙が宿ると
狭き庭の真ん中に置かれた一対の石
石はまことに不思議な物である
プレスリーほどの歌手だから
フィルムが保存され
はるかな時空を超えて
今ここで目の前で歌唱している彼を感じとる
WISE MEN SAY
ONLY FOOL RUSH IN
愚か者だけがせきたてられ恋にとびこむのだと
賢者はのたまう
けれど けれど
ちょっと馬鹿にならなければ
人は生きていけない
賢者は生きることができない
愚か者の勝ちだ
人生に恋するのでなければ
人は生き延びられない
眠れ 眠れ
太郎の海馬
太郎の海馬の眠るとき
花子の海馬もまた眠る
眠れ 眠れ
花子の海馬
花子の海馬の眠るとき
太郎の海馬もまた眠る
眠れ 眠れ
太郎の海馬も
花子の海馬も
深い深い底に向かって
眠りの谷に落ちていけ
清貧に生きること
難しいが多くの人が成し遂げるだろう
政治家として生きること
それもまた難しいが少数の人は実現するだろう
一国のリーダーであること
至極難しいが一握りの人は成し遂げるだろう
三つを兼ね備えたのは
ただ一人
フィデルだけが成し遂げた
弁論 戦い 体力 知性
人間のあらゆる能力を開花させ
善に用いた稀有の存在
スマホ片手の旅人は
道をきかなくても迷わない
スマホ片手の旅人は
民家の写真をとりまくる
スjマホ片手の旅人は
立ち止まり自撮りして
しばし自分に酔いしれる
旅人がスマホを駆使するのか
スマホが旅人を駆使するのか
どっちだっていいのだが