知らなかった
ミモザって
イタリアらしい花だってことを
色は黄色しかないらしい
イタリア がんばれ
知らなかった
ミモザって
イタリアらしい花だってことを
色は黄色しかないらしい
イタリア がんばれ
財布がひとつ落ちていた
財布と言っても小銭入れ
拾ってみたら自分の物
自分のクルマのドアの下
雨に濡れ皮が湿ってた
車を降りるときに落としていたのに
気づかなかったのだ
なんと運のいい
盗られても文句は言えないところだった
中身のコインはピカピカ
雨降りの夜の出来事
ここに一組の男女がいる
私たちが出会ったのは運命的だったのね
こうしてこの男女は結婚した
時は流れ
その間にいろんなことがあった
こどもが生まれ育ち
やがて巣立っていった
ある日
どちらからともなく
別れ話が持ち上がった
時は流れ
男女は別れた
私たちは分かれるように運命が決まったいたのだね
街路樹のイチョウに小さな葉がつき始めた
幹は雨にぬれて、コケの緑がひきたつ
まことに春らしい命のいきおい
けれどもこの寒さは初めての経験だ
4月の雨ふる日の寒さと冷たさ
やはり5月が来るまでは
暖かさとぬくもりはやってこないのだ
5月 5月 5月
早く来い
この花なーに
お母さん
植物にくわしいお母さんはこう言った
ミモザっていうのよ
風がそのとき吹いて
女の子の帽子を飛ばしそうになった
女の子は両手で帽子を押さえた
ミモザの花は
ゆらゆら揺れている
春うららの嵐山
人影はなく
40年前に戻ったかのように
食材は宅配で注文するようになってから
もう25年
週末に食材を求めてスーパーマーケットへ
そんな暮らしはせずに来た
今日はこれを食べたいと思っても
そうはいかない
家にある物で作る食べ物を食べられれば
満足しなくちゃ
米だってトイレットペーパーだって買える
宅配のありがたさ
今年の目標は
フードロスを減らそう
あまりに平凡な題で
だれもが書ける話だ
けれども
入学式がなかったという話なら
かける人はぐんと少なるにちがいない
これから書くのは
入学式がなかった思い出
1968年4月
覚えている人がいるだろう
東大の入学式が中止されたことを
代わりに学科ごとの入学式が行われた
挨拶に立ったのは
政治学の教授の京極純一氏だった
丸い眼鏡をかけ、すでに白髪交じりの
背広姿だった
「もう一度入学試験をしたら君たちの3分の2は
入れ替わる」
続けて
「君たちに求められているのは卓越性の追求なんだ」
今もこの二つの話は忘れられない。
3月下旬のあたたかな週末
大文字山にもう一度登った
今度は銀閣寺のわきから
送り火の火元まで
ゆっくり歩いて1時間
息をきらして
登り切った
町並みを見下ろしながら
あれは何 これは何と
言い当てられないのがくやしい
言わずと知れたオードリーヘップバーンの
代表作。
誰もが見る映画の一つだ
私が見たのは30歳をだいぶ過ぎたころ
帰省したときに父の本棚にあるのを見つけたのだった
LDといって今はないタイプで、DVDの前身のものを
テレビ画面で見た。
「初めて観たな」と父にいうと
父は
「ずっと勉強に時間を割いていたから
見る時間がなかったんやな」
と父は言った
「なんや、こんな有名な映画を見たことなかったんか」
とは言わなかった。
父は、万事こんなふうに、
今風に言えば
息子の私の気持ちに寄り添ってくれる人だった
亡き父に
思いあふれて
散るさくら