夙川河口の近く
浜風が窓のカーテンをゆらす家に
その男は住んでいて
豪雨で流されてきた
猫2匹を飼っている
豪雨の翌日
どうやら生後1週間ほどだったので
牛乳を与えて育てたのだった
ある年の暮れ
知人から喪中はがきが届いた
妻に先立たれたことを知り
なんだか悲しくなり
自分の妻にこんなことを語ったという
「おれなあ、きみが先にいったら
ずっと落ち込んでると思う」
帰ってきた返事は
「あなたなんて、1週間したら
けろっとしてるわよ、きっと」
これを聞いて
男はもっと悲しくなり
次の朝
ふとんから出れなくなった
そのとき
ねこがきて
男の鼻をなめた
そのあと
男は鼻の頭を
こすりながら
明るい光が窓のカーテンの
向こうにさしたのを
目にとらえた