大阪方面に行く用事があり
電車に乗り、4人掛けのいすに
こしかけられた。
隣席の中年の男が
向かいの席の同じく中年の男と
大きな声で話し合っていた。
いやでも耳に入ってくる。
こういうのをとらわれの聴衆というのだそうだ
しかし話の内容は興味深いものだった。
連勝記録というものはいつかは止まるものだ
14歳からいつまでプロ棋士でいられるかわからないが
生涯勝率の方がずっとだいじな数字だ。
しかし連勝記録はフィーバーを起こすには
もってこいの数字だから報道会社にとっては
とびつくわけだ。
ところで元の記録保持者がテレビに出ていただろう。
名もない6段のプロ棋士だったろう。
そうなんだ。ぱっとしないプロの一人だ。
ということは藤井4段がもしかしたら6段止まりになるかもしれないわけだ
羽生や谷川のプロ棋士になってからの戦績を調べてみればいいのだ
ちっとも報道に出なかったことはたいした連勝記録はもっていないわけだ
これからわかるのは
連勝記録はその後の上達の程度を予想できるものではないこと
藤井4段は6段や7段の棋士で終わるかもしれない
ちらりと恐怖がうかぶ
こんなことは当の藤井少年が一番よく知っているはずだ
目の前の一番だけが将棋人生だ
今ここで生きる
身を以て知っているはずだ
それにしても幼くして打ち込むことを
見つけた藤井少年は幸せだな
オレなんかあっちへふらふら
こっちへふらふら
平々凡々
やりとおしたことは何もない
平凡だって悪くはないさ
電車は梅田駅に着いた