漁師に息子がいた
その男は漁に従事するうち
とりこになった
沖に出ると帰港したがらないのだった
ずっと沖にいたい
男はそう言い
帰港しても陸に上がらず船中から離れない
漁に魅せられた男には
沖が我が家になった
漁師に息子がいた
その男は漁に従事するうち
とりこになった
沖に出ると帰港したがらないのだった
ずっと沖にいたい
男はそう言い
帰港しても陸に上がらず船中から離れない
漁に魅せられた男には
沖が我が家になった
孫 「おばあちゃん、私、弾丸ツアーに行ってくるよ」
祖母「おっかないね。その弾丸ってのは。危険なところへ行くのかい」
孫「そうでなくて。目的地へ一目散、という意味よ」
祖母「弾丸だから、行きっぱなしなんじゃないの。
帰ってくる弾丸なんて聞いたことない」
孫「そういわれたら、へん。でも私の弾丸ツアーは
ちゃんと帰ってくるの」
祖母「そうかい、気を付けて行っておいて」
孫「ところでおばあちゃん、お願いがあるの。
旅費が足りないの」
今も昔も台風は変わらない
8月 9月 ときに10月
列島を海上から陸上へと
南から北へと
西から東へと
突き進む
圧倒的な馬力だ
昔 むかし こどもの頃
無邪気だったから いや無責任だから
無責任だから いや責任は免除だから
台風を楽しみにしていればよかった
降りしきる雨
増水する川
水没する道路
停電
ろうそくの明かりが楽しくて
学校は休み
兄妹で遊んでいればよかった
台風一過
空の青さが目にしみた
海浜を見に行った
波はまだ荒々しく
流木とそれを拾う大人の姿
浣腸までが落ちていたよ
ふらんすにあこがれ
アーベーセーしか知らずに
渡仏した男がいた
知り合ったフランス田舎出の娘と
結婚し山がちの村に暮らした
羊を飼い牛を飼い小麦を育て
やがて生まれた子どもが3人
農夫になるよう育てた
村の会合に出席し祭りに参加し
フランス人になっていった
折からのツーリズム そんな村にも
日本の中年夫婦が村のホテルに
宿泊した
声をかけられたのだが
日本語は完ぺきに忘却していた
見た目にもフランス男になりきり
日本人の面影は何もなかった
祖国など念頭になく
ただひたすらに異国の旅人を
もてなすのだった