秋の夜長の日から
編み物にとりかかり
すでにマフラー
セーター
手袋
完成し
冬の到来を待つばかりとなった
寒波が初めて来たとき
母の顔がほころんだ
きょうこそ
わが作品の出番が来たのだ
ところが
こどもは風の子
半袖で遊びまわるのであった
もっともっと強い寒波が来るように
母は願うのだった
そして観測史上最大の寒波が来た
今度こそ
セーター マフラー 手袋
全部を身に着けて学校へ向かった
帰宅したとき
元の半そで姿
友だちにあげたのだとさ
秋の夜長の日から
編み物にとりかかり
すでにマフラー
セーター
手袋
完成し
冬の到来を待つばかりとなった
寒波が初めて来たとき
母の顔がほころんだ
きょうこそ
わが作品の出番が来たのだ
ところが
こどもは風の子
半袖で遊びまわるのであった
もっともっと強い寒波が来るように
母は願うのだった
そして観測史上最大の寒波が来た
今度こそ
セーター マフラー 手袋
全部を身に着けて学校へ向かった
帰宅したとき
元の半そで姿
友だちにあげたのだとさ
もし歌を詩を
季節ごとに分けていくと
春の詩が一番多く
その次が夏の詩
そして秋の詩
最後が冬の詩になるのだろうか
たしかに冬は歌う心が冷え切ってしまう
だからといって
冬の詩を歌わなければ
ますます歌心は枯れ果てるだろう
街路にも寺院の庭園にも
雑草すらも枯れ果てて
冬枯れの荒涼とした風景は
歌うにあたいするのだろうか
これ以上落ちることはない
零落の季節は美しくないのだろうか
一事が万事
ずぼらと言われて生きてきた
ただひとつ取り柄は
こたつの魔力につかまえられなかったこと
人は言う
こたつに入ると出られなくなると
これだけは自分に起こらなかった
人は人から学ぶもの
人は人を真似るもの
誰から言葉を学んだか
まさか忘れはしないだろう
真似ることなしに独創は得られない
だからといって近寄りすぎることは
危険だ
屋根を支える4本柱は
離れて立つ
柱と柱
密着しすぎては屋根は落下する
サンタさんが来るまで起きてようね
姉弟はそう決めて
歌を歌ったり絵本を読んで
眠い目をこすりながら待っていた
9時、10時、11時、0時
心配になってきて
家の裏側の大きな川を
窓から眺めて流されている人がいないか
確かめた
きっと道に迷っているんだわ
ふたりは考えた
0時を回り二人は眠りに落ちた
眠る前に手紙を書いた
道に迷ってやっと着いたサンタクロースは
女の子と男の子の枕もとに
置いてある手紙を見つけた
サンタさんへ
私の願いを聞いてくれるのなら
お母さんとお父さんにあげたい物があって
それを私と弟はほしい
お母さんには手袋をあげたいの
手があかぎれて痛いから
お父さんには靴下をあげたいの
足のしもやけがかゆいから
こどもらの希望がかなえられたことは
言うまでもない
ただのガラスの
三角柱にすぎないのだが
いったん光を浴びれば
七色が立ち現れる
長さ1000メートルのプリズムが
もしあるのなら
長さ1000メートルの虹が見えるだろう
こんな夢想をする
風変わりな男がここにいる
家の窓という窓のガラスを
プリズムで作った
虹の家ができあがり
バンダナ長髪の男を見ると
近所の子供らは
七色ハウスのあんぽんたん
とからかうのだった
あなたと私だけの
小さな空間ゆえのくつろぎは
捨てがたいけれど
人にはもっと大きな空間がいる
視界の届くかぎり
地上は200キロ遠方が見え
天空は果てしない高さを望む
人はいかにも微小な存在だが
大空間があればこその
生命体
あなたと私
孤独ではないことを確かめるために
この寄る辺なき大空間がときにはほしいのだ
雨ふり雪ふりみぞれふる
冬至の朝
霜柱の立つ道踏みしめて
一人歩きのさびしき
父母に見送られた
この道のなつかしき
冬至の朝
始まれば終わる道理は
知りたれども
見送る人のなきぞさびしき
とある町のうら若き女
自他ともに認める守銭奴だった
着ているパジャマは
10年以上の年代物
袖口襟元擦り切れていようが
どうぜ寝間着よ
誰に会うでなし
カレーライスを食べるとき
混ぜたりせずに
ルーから食べていくので
皿は汚れず水も汚さず
まことに合理的
働くとなると
懸命に働く
人に対しては愛情深く接するので
誰からも気に入られた
この人物に言わせると
人は金
タイム イズ マネーではないのだ
ピープル イズ マネー
私は金が好き
私は人が好き
だから誰に対しても
心をこめて接するのだった
ここまでくれば
見上げたものだよ
守銭奴のお嬢さん
不思議な現象である
知らぬ間に眠りについて
気がつくと目覚めている
意志もいらず準備もいらず
眠りがやってくる
やってきた眠りは
朝には去っていく
日に照らされて
消えていく朝露のように
暗闇のなか
目覚めていることのつらさ
そのつらさから逃れられるように
眠りが与えられているのだ
手招きすれば逃げていく
知らぬふうをしていると
寄ってくる
眠りは黒ネコに似ている