編み物(平成26年12月28日)

秋の夜長の日から

編み物にとりかかり

すでにマフラー

セーター

手袋

完成し

冬の到来を待つばかりとなった

寒波が初めて来たとき

母の顔がほころんだ

きょうこそ

わが作品の出番が来たのだ

ところが

こどもは風の子

半袖で遊びまわるのであった

もっともっと強い寒波が来るように

母は願うのだった

そして観測史上最大の寒波が来た

今度こそ

セーター マフラー 手袋

全部を身に着けて学校へ向かった

帰宅したとき

元の半そで姿

友だちにあげたのだとさ

 

冬の詩(平成26年12月27日)

もし歌を詩を

季節ごとに分けていくと

春の詩が一番多く

その次が夏の詩

そして秋の詩

最後が冬の詩になるのだろうか

たしかに冬は歌う心が冷え切ってしまう

だからといって

冬の詩を歌わなければ

ますます歌心は枯れ果てるだろう

街路にも寺院の庭園にも

雑草すらも枯れ果てて

冬枯れの荒涼とした風景は

歌うにあたいするのだろうか

これ以上落ちることはない

零落の季節は美しくないのだろうか

 

 

学ぶこと(平成26年12月27日)

人は人から学ぶもの

人は人を真似るもの

誰から言葉を学んだか

まさか忘れはしないだろう

真似ることなしに独創は得られない

だからといって近寄りすぎることは

危険だ

屋根を支える4本柱は

離れて立つ

柱と柱

密着しすぎては屋根は落下する

道に迷ったサンタクロース(平成26年12月24日)

サンタさんが来るまで起きてようね

姉弟はそう決めて

歌を歌ったり絵本を読んで

眠い目をこすりながら待っていた

9時、10時、11時、0時

心配になってきて

家の裏側の大きな川を

窓から眺めて流されている人がいないか

確かめた

きっと道に迷っているんだわ

ふたりは考えた

0時を回り二人は眠りに落ちた

眠る前に手紙を書いた

道に迷ってやっと着いたサンタクロースは

女の子と男の子の枕もとに

置いてある手紙を見つけた

 

サンタさんへ

私の願いを聞いてくれるのなら

お母さんとお父さんにあげたい物があって

それを私と弟はほしい

お母さんには手袋をあげたいの

手があかぎれて痛いから

お父さんには靴下をあげたいの

足のしもやけがかゆいから

 

こどもらの希望がかなえられたことは

言うまでもない

 

プリズム(平成26年12月23日)

ただのガラスの

三角柱にすぎないのだが

いったん光を浴びれば

七色が立ち現れる

長さ1000メートルのプリズムが

もしあるのなら

長さ1000メートルの虹が見えるだろう

こんな夢想をする

風変わりな男がここにいる

家の窓という窓のガラスを

プリズムで作った

虹の家ができあがり

バンダナ長髪の男を見ると

近所の子供らは

七色ハウスのあんぽんたん

とからかうのだった

 

 

起きて一畳寝て半畳(平成26年12月23日)

あなたと私だけの

小さな空間ゆえのくつろぎは

捨てがたいけれど

人にはもっと大きな空間がいる

視界の届くかぎり

地上は200キロ遠方が見え

天空は果てしない高さを望む

人はいかにも微小な存在だが

大空間があればこその

生命体

あなたと私

孤独ではないことを確かめるために

この寄る辺なき大空間がときにはほしいのだ

 

 

ある守銭奴(平成26年12月21日)

とある町のうら若き女

自他ともに認める守銭奴だった

着ているパジャマは

10年以上の年代物

袖口襟元擦り切れていようが

どうぜ寝間着よ

誰に会うでなし

カレーライスを食べるとき

混ぜたりせずに

ルーから食べていくので

皿は汚れず水も汚さず

まことに合理的

働くとなると

懸命に働く

人に対しては愛情深く接するので

誰からも気に入られた

この人物に言わせると

人は金

タイム イズ マネーではないのだ

ピープル イズ マネー

私は金が好き

私は人が好き

だから誰に対しても

心をこめて接するのだった

ここまでくれば

見上げたものだよ

守銭奴のお嬢さん

眠り(平成26年12月21日)

不思議な現象である

知らぬ間に眠りについて

気がつくと目覚めている

意志もいらず準備もいらず

眠りがやってくる

やってきた眠りは

朝には去っていく

日に照らされて

消えていく朝露のように

 

暗闇のなか

目覚めていることのつらさ

そのつらさから逃れられるように

眠りが与えられているのだ

 

手招きすれば逃げていく

知らぬふうをしていると

寄ってくる

眠りは黒ネコに似ている