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夕刻に徳島鳴門を出発した高速バスが
まもなく淡路島を抜けて
明石海峡大橋にさしかかるとき
身を乗り出すようにして見つめる
風景がある
すでに日は暮れて
明石から舞子まで
海浜沿いにまぶしいほどに
灯りがともる
その風景が好きだ
私が知っていた明石舞子とは様変わりし
うらさびしい風景を思い描いていたのとは
正反対である
父母や祖父母が往来していた町
今よりもずっと新鮮な魚を食べていた町
思い出す時間すらないほど
ぐんぐんバスは飛ばす
橋を渡りきると
対岸の山中の道路へと突き進む
そこは闇の世界に
道路が浮かび上がる
いびきをかいて寝た
次の日
にきびができた
にきびができた
その晩
いびきをかいて寝た
いびきとにきび
どっちが先だろ
椅子の変わりようといったら激しすぎて
時代についていけない思いがする
反面で
テーブルは時計がとまったように変化しない
ただ色合いだけが変わって
現在は明るい色が主流になっている
私がすきなテーブルは食卓である
食事のみならず
何をするのも食卓がいちばんいい
書き物 読み物 ノートパソコン
ときには
遠く懐かしい家族の食卓を思い出して
胸が熱くなるのだ
4月1日をさかいに
そば屋のどんぶりが
小さくなった
うどん屋 ラーメン店 やはりどんぶりは
小さくなった
来年10月1日
どこまでどんぶりは小さくなるのだろうか
まんじゅう もなか
和菓子も中身が少なくなった
来年の秋にはどうなることやら
本の広告を見ていたら
『ブログの作り方』
という本の題が目に入った
もう一度見ると
『どぶろくの作り方』
であった
混ぜてしまえば
『ドブログの作り方』
という本になる
ブログとどぶろくとを
両方一度に作るという
結構な本のできあがりである
ふとある人物のことを思い出す
なにげなく浮かんだ言葉からの
連想で知人を思い起こすことがある
そうすると不思議なことが起きる
当の人物が現われるのだ
ホイッスラーという画家の展覧会を見た
日本でいえば
江戸末期から明治にかけての時期に
イギリスで作品を発表していた画家である
都会を好み、テムズ川にかけられる鉄橋を
好んで描いた
ただ感嘆するばかりのうまさである
絵画とは不思議なものである。
みんなちがっていて、それぞれが
最高の美しさを現わしている。
みんなちがってみんないいとは
最高の画家たちの最高の作品に
何よりもあてはまる
遅刻癖の花嫁さん
やっぱり結婚式に
遅刻した
後の式が控えていたので
開始時間を延期できず
やむなく挙式開始
花嫁がいないままに
進められた
けなげな花婿は
祭壇を背にして
バージンロードを見つめる
その目に涙をたたえて
到着を待つのだった
ベストコンディションの日
そんなときがあるのだろうか
きのうはからだがだるかった
きょうはやる気が足りなかった
明日はどうなることか
きっとベストコンディションの日は
やってこないだろう
思い出した
食べたことがあった
北の町の場末の魚料理店で
その味わいはまったく思い出せず
ただ食べたことだけがよみがえる