関西のとある山の名前
六甲山 鉢伏山 円山
山頂はなだらかな傾斜
とんがった山などどこにもない
時間をさかのぼれるのなら
山ができた瞬間に立ち合いたい
山がとんがっていた時に
戻ってみたい
関西のとある山の名前
六甲山 鉢伏山 円山
山頂はなだらかな傾斜
とんがった山などどこにもない
時間をさかのぼれるのなら
山ができた瞬間に立ち合いたい
山がとんがっていた時に
戻ってみたい
こんな言い伝えがあった
男子厨房に入るべからず
封建的 男女差別 女性蔑視
非難は雨あられと語られる
深い知恵があったとは誰も思わない
厨房では火のために熱がこもり、
片肌脱ぎ、もろ肌脱ぎが
当たり前
そんな中に男が混じればどうなるか
そうではなくとも
複数の人間が協力しあって
調理をするとき、同性どうしの方が
まとまりがいいはずだ
すっかり定着した
夫のお産立ち合い
赤ちゃんが産道をとおり
全身を現わすと写真をとって
涙を流し笑顔を輝かせる
生まれたばかりの児は顔をしかめて
泣いているのだが
母親は安堵する
子どもが無事生まれたことに
夫が良き父親になりそうな予感に
月日が過ぎて
4人に一人夫は家庭を顧みなくなる
3年たてば別の人
男の涙を信じすぎてはいけないよ
空に天井がもしあれば
さぞや気分は悪かろう
どこまでが空で
どこからが宇宙か
その境界は知らない
それにしても
天井なき空の深さ
男は
一階あたりは6畳の広さだが
10階建てどころか
もっと高い塔の家に住んでいた
ふだんは1階、
ときどき2階、
たまには3階
そんな住み方だった
4階以上は行ったことがなかった
台風の過ぎた日
あまりに空が美しく
男は
上の階へと昇り始めた
我が家なのだが
知らない空間に目を瞠るうち
だんだん高く高く
下界を見下ろす階に届いた
やめればよかったのだが
さらに高く昇って行った
男は降りることを忘れ
住民は男の存在を忘れた
同じ母ネコから生まれた三匹の子猫
エサ皿に顔を押し付け合って
何やら話し込む
おなかがいっぱいになるまで
食べるって
幸せな気分
確かにネコの餌箱はすでにカラッポ
お天気がいいって
幸せな気分
確かに空は青く澄んで晴れている
あんなふうに顔を寄せ合って
日差しに目を細めて
きょうは恐ろしい大型ネコは
まだ現われない
子ネコにとって
こんないい日はない
松くい虫にやられてしまった
赤松が切り倒されることになった
切り倒し作業は困難をきわめる
庭園の主は残念な表情をして
作業現場をうろうろしながら
眺めている
植えてから40年
15メートルを超えた巨木が
一日で切り倒された
風のとおりがよくなり
あたりには松の香がただよっている
耳に心地よい詩を書くのが
詩人の仕事ならば
そうするだろう
目に美しいものを歌うのが
詩人ならば
そうするだろう
口当たりのよい文句を
連ねるのが詩であるならば
そうするだろう
暗く哀しい歌を歌わねばならないのなら
そうするだろう
絶望に淵があるのなら
淵に沈み嘆きの歌を
歌わないといけないのなら
そうするだろう
なんという無節操
根拠なき自信だね
と人は嗤う
いいのだ嗤ってくれて
しかし人は知らねばならない
自信に根拠を求めることの結末jを
他方には
根拠なき劣等感とともに
生きる人がいる
当人にとっては
根拠があると言うのだが
いくら言い聞かしても
聞く耳はどこへやら
友だちが転校していくので
ぼくは泣いた
見ていた母は
会うは別れの初めだから
なぐさめにもならない言葉を
言うのだった
何年かしてその友だちと
再会したのだがお互いに
ぎこちない態度で時間がすぎていった
友だちであったあの時間が
二度とは戻らないことに
僕は肩を落とした